鹿のジョニー

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去年の秋のある日。
近所のおっちゃんから「切れる刃物持って出てこい」との電話が入った。
行ってみると、農家さんのとうもろこし畑の有刺鉄線に雄鹿が引っ掛かっていて、どうにかして欲しいとの事だった。

馬並みに大きな鹿で、以前夜に車を走らせていた時に雌鹿と一緒のところに遭遇した鹿に違いない。
ライトで照らされた姿も迫力があったが、目前で暴れている姿は圧倒的な存在感だ。
まず角を縛り、頭の動きを抑える。
足を縛り、更に動きを抑える。それでも、暴れ続ける鹿。

鹿を殺める事に可哀想だとか残酷だとかの気持ちも当初はあった。
しかし、作業が始まると不思議なもので、あくまでも肉を取るための作業との意識に変わっていたのだった。

持参した包丁が役立たないので、おっちゃんが家に出刃包丁を取りに行く事になった。
その間、必死でもがき逃げようとするのを、角に縛ったロープ引っ張り動きを抑える。
すごい力でもがく。もがく。こちらも汗だくになりながら、引っ張る。
大きな角でつかれたら、ひとたまりもない。こちらも命がけだ。
おっちゃんが戻って来るまでの時間は、とても長く感じられた。
俺は、鹿にジョニーと名前をつけた。

出刃包丁が届き、仕留める時がきた。
するとジョニーは、観念したかのようにおとなしくなったのだ。
自分が今から殺されて肉になる事を受け入れたようだった。
人間は、よほどの人間でも最後の最後まで死の恐怖や生への未練が残るだろう。
しかし、鹿は死を受け入れられる生き物なのだ。
さすが、アイヌ民族が“ユックカムイ”(カムイとは神様の意味)として崇めた存在だ。
その崇高な姿には、本当に感動させられた。

首の動脈を切ると、ジョニーはうめきながら倒れていった。
それから、内臓を出さないようにしながら皮を剥いだ。 睾丸も傷つけないようにする。
これは、肉が臭くならないようにするためだ。
上等肉の背肉はおっちゃんが持ち帰り、残りは家に持ち帰っての作業となった。
家の前で、肉を削いでいく。肉の体温で湯気が立ち上る。
心臓と肝臓も有り難く頂いた。
血生臭さと血まみれの塊。作業途中に、まるで惨殺現場のような光景を隣の人に目撃され、恐怖の顔で家の中に逃げられてしまった。

削いだ肉を台所に持ち込み、筋や脂身などを処理する。
家中の鍋や樽や桶を総動員しても収まり切らない。
台所中、肉だらけ。。獣臭が充満。。
正直、しんどい作業だ。

部位ごとに分けて大半は冷凍して人にあげたり、お客が来るたびに振る舞った。
脂身や筋肉や骨は家の犬だけでなく、友達の犬たちにもやった。猫にも肉をやった。
人間も動物も大喜びで食べていた。
皮はそのまま干してみたが、獣臭くて使い物にならなかった。やはり、鞣すなどしないとダメらしい。
こうして、余す事なくジョニーの命を頂いたのだった。

鹿の肉は、何ともパワーに溢れている。
人間が踏み入れられない山を登り、人間の知らない風を感じ、雄大な景色を拝み、澄み切った空気を吸い、自然の草や木の芽を喰らった鹿。
スーパーに並んだ肉にはない、エネルギーが鹿肉は詰まっているのだ。

そしてジョニーの頭は、近所の山の木に縛っておき、山の獣や虫やバクテリアによって、皮や肉、脳ミソも目玉も食され分解され。。
角と骨の姿となりました。

コメント
私も遊びに行きたくなりました!!
  • waterproof sparrow
  • 2013/05/14 9:00 AM
うーん!!読み応えのあるブログです。感動しました!!
  • woopee
  • 2013/05/13 5:39 PM
鹿肉の美味しい調理方法があれば、教えて下さい。
  • 林和弘
  • 2013/05/12 12:45 PM
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